NPO日本移植支援協会

専門家の意見

星野 健 先生

公益財団法人富山県移植推進財団
富山県移植コーディネーター
高橋 絹代 さん


2012年

「小児の臓器提供を経験して」
 移植コーディネーターはレシピエントコーディネーターとドナーコーディネーターに分かれます。レシピエントコーディネーターは移植を受けたい人を支援し、ドナーコーディネーターは臓器提供をしようとする人の意思と、そのご家族を支援する事が仕事です。私は、平成9年6月から富山県のドナーコーディネーターとして仕事を始めました。コーディネーションの数は余り多くありませんが、心停止後の腎提供、脳死下の臓器提供にかかわり、多くのメッセージをドナーやその家族から感じ、学ばせていただいています。

 臓器提供の選択肢は、脳死や救命不能となり、且つ、医学的に臓器提供の適応がある場合に、情報の一つとして家族に提示されます。家族に説明の希望があれば、コーディネーターは呼ばれ面談を行います。承諾されると、法的脳死判定を2回実施します。6歳以上は1回目と2回目が6時間以上の間隔をあけますが、6才未満の小児の場合には、24時間あけます。そして、2回目の法的脳死判定終了時刻が死亡時間となります。その後摘出チームが集まり手術が行われ、ドナーはエンゼルケアの後に退院となります。臓器は摘出後速やかにレシピエントの待つ病院に搬送され移植が行われます。

18歳未満の小児の場合には虐待の否定と、倫理審査が加わります。また、6歳未満の場合には、法的脳死判定の間隔も長いため、成人の臓器提供に比べて時間がかかります。プレスリリースは法的脳死判定後、日本臓器移植ネットワークによって行われますが、この後、プライバシー保護に関しての緊張が高まります。

 今回の提供では、ご両親のご理解によって病院名の公表も了解され、提供後のコメントも寄せていただきました。こうしたご家族の協力は、社会が臓器提供を理解することや移植医療の透明性に大きく貢献しました。プレスリリース後は取材が多くなり、新聞の1面に記事が載る可能性も家族には予めお伝えし、この事も了解されてご承諾をいただきました。  

この場面で感じた事は、死別悲嘆のそっとしておいて欲しい時に、そっとしてもらえない事の理不尽さです。臓器提供を了解したからといって、インタビューが許される訳ではない筈です。「思いやりのある想像力」を持ってほしいと思いました。また、「自分だったら」と考えた人は多かったと思いますが「思い」「考え」「感じ方」は人それぞれです。「違う考え方が尊重し合える社会」が、臓器提供と臓器移植を正しく推進していくのだと思いました。

 何も無い時に考える臓器提供は、「日常生活」プラス「想像」の世界ですが、ドナー家族の立場になった場合には、「非日常」「事実」「感情」「考え」「社会環境」などの要素が加わる全く違った状況なのだと思うのです。
 ドナーコーディネーターは、こうした家族にお話をします。言葉の理解やイメージは人それぞれ違います。今、振り返ってみて説明者としての責任の重さをひしひしと感じています。そして、ドナーとドナー家族の支援者として、より良い「かかわり」について考え続けて行きたいと思います。

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