NPO日本移植支援協会

専門家の意見

清水 美紀子 先生

東京女子医科大学
循環器小児科 助教
清水 美妃子 先生

臓器移植改正法施行後初の小児心臓移植の実現に際して

2011年4月12日、臓器移植改正法施行1年を待たずして、15歳未満の小児からの臓器提供があった。最愛の子供を亡くしたご家族に哀悼の意を表するとともに、悲しみの中にあって、勇気ある決断をされたことに敬意を表したい。小児の心臓は小児に優先的に提供されるという新しいルールにのっとり、提供された心臓は大阪大学で重い心臓病の子供に移植されたとのことである。移植医療は手術の成功はスタートである。これから急性期を乗り越えて、できるだけ長く高いquality of lifeが維持できるよう頑張ってもらいたい。

日本では、被虐待児からの臓器提供は認めておらず、今回もその評価に強い関心がもたれていた。しかし、ただでさえ子供を亡くし、深く傷ついているご両親、ご家族に対して、虐待の事実があったかどうかの評価を行うということの意味をよく考えていただきたい。米国では、被虐待児からの臓器提供が多くを占めていると言われているが、虐待が判明するまでは死亡宣告は行われず、専門の機関が入って真偽は究明される。その上で、臓器提供の意思はその判定に左右されることなく優先されることになっている。

したがって、臓器提供によって虐待の有無の真偽が隠ぺいされることは決してなく、二つのことは独立した別個の問題とされている。虐待の定義というのも非常に難しい。定義を間違えれば、全ての子供は被虐待児になりうるし、逆もまた然りである。今回、虐待はなかったとの判定がスムーズにつき、移植への障壁とならなかったことは喜ばしいことである。今後も、移植関連施設においては、いつ症例が出ても対応できるよう準備を進めていただきたい。

小児の脳死判定に関しても、より多くの人に理解してもらう必要がある。驚くべきことに、小児科医であっても、脳死と植物状態の区別がつかない人が多くいる。これは憂うべきことで、医師自身がきちんと理解していないことを患者・家族に説明することはできない。脳死からの臓器移植は、あくまで、全脳機能が不可逆的に停止した状態=脳死の状態にあり、かつご本人の臓器提供の意思が書面で確認できる場合、もしくは不明であってもご家族の承諾がある場合のみであり、他者により強要されることはあってはならない。これらのことを踏まえれば、小児においても適正な脳死判定のもと臓器提供は可能であり、今回それが証明されたものと考える。

レシピエント側の管理については、これから我々医療者が症例を重ね、また学会や海外の施設での経験等をもとに向上させていかなければならない。日本の心臓移植の長期成績は、現在も移植先進国のそれに劣ることがないばかりか、きめ細かいケアと、怠薬等の問題が比較的少ない国民性からか、非常に良いのが現実である。これから症例が増え、移植医療が特別なものではなく、一般に普及したときにこれがどうなっていくのかが注目される。筆者の施設では、臓器移植を受ける子供の支援プログラム開発に関する研究を看護師・臨床心理士・医師らで行っており、移植に関する意思決定のプロセスにおける支援、移植にまつわる医療行為へのプリパレーション、移植後の多角的なケアプログラムの構築を目指している。

先にも述べたように、移植医療は一生続く医療である。特に子供達は、成長発達という大人とは違った側面があり、思春期の怠薬などの問題を抱えている。そうでなくても、免疫抑制剤の使用に伴い、さまざまな合併症や続発症をきたす可能性があり、そういった移植後の患者様たちが直面する様々な問題についても多くの人に知っていただき、医療者はそれについて学び、適正な治療、ケアに結び付けていかなければならない。

今回の日本で初めての小児からの臓器提供を大きな一歩として、医療者だけでなく、広く多くの人に臓器移植について知っていただき、命をつなぐリレーを広めていければと思う。(H23.7)

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