NPO日本移植支援協会

専門家の意見

阪井 裕一 先生

国立小児病院
麻酔集中治療科
(平成13年)
阪井 裕一 先生

臓器移植を希望される患者さんと一緒に何回か米国へ行って来ました。 患者さんやご家族の大変さを痛感することは言うに及びませんが、よく外国人に、しかも50年あまり前に戦争をした相手に臓器を提供してくれるものだ、という感慨を毎回禁じ得ません。私は、自分自身や自分の家族、自分の仲間だけにあまりにも目を向けすぎているのではないか、と帰りの飛行機の中で自問します。 帰り着くとすぐに日常の中に埋没してしまいますが。

私は小児ICUで仕事をしているので多くの患者さんを看取っています。 米国での経験を思い出すと、自分の子供が亡くなろうというときに、他人の子供のことを考えられる姿勢に戸惑いさえ感じています。患者さんのご家族ばかりでなく、医療者側の姿勢にも違いがあるのでしょう。

先日読んだ本に、「思いやりのあるケア(compassionate care)」を「方針」として掲げている米国の病院の話が出ていました。 私たちも、このような一見当たり前のようでいてこの国で実現できていないことから、まず声をかけて始めなくてはならないでしょう。 私の周囲から始めることが、ひいては移植医療を良くすることにつながるのではないか、と期待しています。臓器移植法案の改正も必要ですが、日常のケアを見直すことが医師に求められていることだと思います。

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