NPO日本移植支援協会

専門家の意見

松田 暉 先生

兵庫医療大学 学長
松田 暉 先生

臓器職の新たな時代に向けて

臓器移植法が成立して12年目にやっと念願の見直しが昨年7月に実現した。日本移植学会や関連学術団体、そして移植を受けまたは待つ多くの患者さんの皆さんの献身的な努力が実を結んだわけで、関係の皆様に敬意を表します。

改正法は平成22年の7月には実施されますが、意思表示カードを持たない方や小児からの脳死での臓器提供が円滑に実現するか、社会啓発とともに救急現場への配慮が急務です。なかでもドナーコーディネーターの育成と増員が待たれるところであります。

臓器移植ネットワークでは中央のコーディネーターを少し増やすようですが、問題は地域でのコーディネーターでしょう。現状では啓発活動もままならず、またもし提供が急に増えた場合に対応が出来ず、現場で混乱が起きないか危惧されるところです。現在のドナーコーディネーターがバーンアウトしないよう今から対応が必要でしょう。

臓器移植への社会の関心は今再び冷めていっています。マスコミも臓器提供が期待外れなら改正は時期尚早であったと言いかねません。それより、新制度での提供、特に小児ではセンセーショナルに報道するでしょう。報道関係には新たな法律のもとでの尊い提供者や遺族を大事に、そっと見守って欲しいとおもいます。11年前の喧騒はもう繰り返してほしくないと思います。

この新しい法律のもとで我が国の臓器移植が進むか否か、国民の姿、心が問われると思います。また医療現場の責任も大きくなります。現場の負担に見合う社会的支援も必要でしょう。法律は変わったが日本人の心は変わらなかった、医療体制が追いつかない、とならないよう願っています。平成22年こそ我が国の移植元年になって欲しいと切に希望しますし、私自身もまだまだ頑張る所存であります。

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