NPO日本移植支援協会

専門家の意見

星野 健 先生

医療法人芙蓉会五井病院
理事長
川越 一男 先生

2010年脳死移植法が改正され、脳死による臓器移植症例は増加を示しています。しかし移植総数も増加していますが、生体肝移植や生体腎移植が増加しており、また、献腎移植をしていた方たちが脳死移植に移行した可能性も否定できず脳死移植が広く一般的に行われているとは言い切れません。でも脳死移植が少しずつ国民の中で理解されてきているのは事実であり意義があると考えています。

2008年ごろから私の病院で渡米して臓器移植を受けた患者さんのフォローアップ外来が始まりました。たまたま知り合いであったコロンビア大学の加藤友朗教授がアメリカで臓器移植手術を行った患者さん達のフォローをするためです。その時、私も移植を受けたお子さんやご両親にお会いする機会がありました。これから移植を受ける親御さんが相談に来られる時の切実な思いや、移植が終わって元気になり晴れ晴れとした気持ちで来院された様子を拝見する事もできました。その時、なぜ日本人の命を日本人が救えないのか、なぜアメリカ人が日本人を助けてくれるのか大きな疑問を感じました。その頃から移植法案が改正される動きが報じられ、加藤教授と伴に脳死移植が理解され法案が成立するために色々な分野の人たちに脳死移植を理解してもらえるようにNPO法人「脳死移植を推進する会」を立ち上げました。年2回の講演会などをおこない政治家、お坊さん、救急医、移植医、ドナーご家族、レシピエントの方々など様々な方にご講演をいただいています。

2010年移植法が改正され脳死移植が推進できる環境にはなってきました。また15歳以下の臓器提供もできるようになりました。環境は整ってきましたが、現実はまだついてきていません。もちろん国民の理解も大切ですが、救急医療の現場で脳死に直面した救命救急医が移植医療に対する道筋をつけることも大切だと考えています。私は救命救急医で専門は救急医療です。移植医療を行うには救急医療の現場での大変な事務作業量が壁になっており、脳死判定や移植コーディネータなどとの連携や移植医への引き継ぎなど、大変煩雑な医療以外の仕事量の多さが妨げになっているように感じています。「脳死移植を推進する会」は簡単に脳死移植をするようにすすめる会ではありません。臓器提供をしないという選択も尊重されなければなりません。でも、臓器提供をしたいと考えている人が脳死になった場合に円滑に希望が叶えられるようにしたいと運動をしています。臓器を提供したいという人の臓器を、臓器提供を受けたいという人に提供し、伴に生きられる事を阻害する理由はないと感じます。

救急医療の現場では必死の思いで救命医療を行っています。すべての方の命を救いたいという思いで救命医療を行っています。それでも救えない命があった時は本当に悲しい気持でした。それでも臓器移植という医療で、亡くなった方の臓器が移植を受けた方の体の中で一緒に生きて行く事が出来れば良い事だと思います。救急医療は移植医療の入り口の一つであることは間違いありません。救急医療の現場でもっと移植に繋げる糸が太くなる事が今後の課題と思いこれからも頑張りたいと思います。

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